無人店舗研究所 UNMANNED RETAIL LAB

無人の花屋は成立するのか?創業50年、新潟を代表する無人花屋への挑戦

新潟県内を中心に、地域に根ざした花屋を展開するフレッシュはな正株式会社。同社が現在、新たなビジネスモデルとして力を入れているのが、フクロウの愛らしいロゴが目印のお花の無人販売所HANASHO OWLです。

長年、対面での接客を大切にしてきた30年以上の歴史を持つ有人店舗を経て、なぜ無人店舗をオープンする決断に至ったのか。

その背景には、コロナ禍という未曾有の危機と、それを乗り越えるための模索がありました。本記事では、日々の徹底した鮮度管理のオペレーション、無人店舗ならではの経営的メリット、導入されているシステムの詳細、そして今後の展望について、同社の丸山氏に詳しくお話を伺いました。

【プロフィール】

丸山 裕介 (代表取締役 )

2013年4月 フレッシュはな正株式会社 入社

2020年11月 同社 代表取締役 就任

30年の歴史とコロナ禍での決断、無人化への展開

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは「HANASHO OWL」という形で、お花の無人店舗を始められたきっかけや経緯について教えていただけますでしょうか。フクロウのロゴやビジョンも非常に魅力的だと感じております。

丸山氏: ありがとうございます。もともとこの場所は、有人店舗として30年以上もの長きにわたり、同じ場所で地域の方々に愛されながら営業を続けてきたお花屋さんでした。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、客足が遠のき売上が非常に減少してしまいました。店舗をこれまで通りの形態で維持していくことが経営的にかなり難しくなり、苦渋の決断ではありましたが、一旦「閉店」という形で店を閉じることになったのです。

ただ、ビルテナントとして賃貸契約をして入っていたため、お店は閉めているものの、約1年間は何の稼働もさせないまま家賃を支払い、場所を借り続けている状態でした。「この場所を使って、今の時代に合った何か新しいアプローチができないだろうか」と日々模索を続けていました。その中で様々なビジネスモデルを研究し、最終的に辿り着いたのが、現在のようなコインロッカー型の無人店舗という形態でした。

ーー出店エリアを変えずに、現在の場所で再スタートを切られた理由や、数ある無人販売の手法の中からロッカー式を選ばれた理由をお聞かせください。

丸山氏: まずエリアに関してですが、もともと新潟市の商業施設が近くにある非常に環境の良い立地で営業していました。数十年かけて培ってきた地域の方々からの認知度や実績という財産がありましたので、そこはそのまま活かしたいと考え、場所は移転せずに同じ場所での再起を図りました。

ロッカー式を導入した理由としては、まず「お客様の視覚的な安心感」です。透明な扉によって中にあるお花がしっかりと見える状態でありながら、購入時の決済も非常に分かりやすい形で完結します。これがサービスとして非常に優れていると感じました。システム選定にあたっては、機械やロッカーの仕様をインターネットで徹底的に検索しました。すでに東京でおなじようなシステムを導入されているお花屋さんがあったため、実際に現地まで足を運んで視察を行い、どのような仕様で動いているのかを自分の目で確かめました。その上で、「これならいける」と確信し、メーカーさんに直接連絡をとって導入を進めました。

徹底した鮮度管理と「ロスを出さない」ための日々のオペレーション

ーー無人でお花を販売するにあたり、最も課題となるのが「鮮度管理」かと思います。ロッカー内での生花販売について、日々の運営体制や品質維持の工夫はどのようにされていますか?

丸山氏: 現在、店舗には全部で30個のロッカーを設置しており、そのうち8個のスペースを利用して生花を販売しています。生花はどうしても足が早い(鮮度が落ちやすい)商品ですので、無人店舗とはいえ、放置することは絶対にありません。毎日必ず1回はスタッフが店舗へ足を運び、お花の様子を確認して新しいものと交換するという体制をとっています。

もしお花が売れていれば、その空いたスペースに新しいお花を補充しますし、仮に売れ残っていたとしても、そのままにはせず新しいものと交換します。お客様がいつ来店されても、常に鮮度が良く、美しい状態のお花をお買い求めいただけるよう、店頭のクオリティコントロールには細心の注意を払っています。

ーー毎日交換となると、販売されなかったお花の廃棄(ロス)が多く発生してしまうのではないかと懸念されますが、その点はいかがでしょうか?

丸山氏: ロスに関するご質問はよくいただくのですが、実は、よほどのことがない限り大きな廃棄ロスは発生していません。毎日交換と状態確認を行っているため、たった1日で商品として完全にダメになってしまうお花というのは基本的にはありません。

店頭から下げたお花は、専門のスタッフがしっかりと状態を確認します。そして、新しく別のアレンジメントや用途で活用したり、適切なメンテナンス(水揚げや剪定など)を施して翌日以降に再度販売したりと、無駄のないサイクルを構築しています。生花を扱うプロフェッショナルとしての技術があるからこそ、無人店舗でもロスを抑えた運営が可能になっています。

ーー在庫の状況や売上の管理など、裏側のシステム周りや決済体制はどのようになっているのでしょうか。

丸山氏: 決済はすべて電子決済に対応しており、売上は自動でシステムに記録され、電子的に振り込まれる仕組みになっています。ロッカーのハードウェアを製造しているメーカーが、中身のソフトウェアやシステムも一括して担当してくれています。そのため、遠隔地にいても売上管理と商品の在庫管理がリアルタイムで把握できるシステムが構築されており、日々の運用や裏側での管理が非常にスムーズに行えています。

項目詳細
システム形態冷蔵機能付きコインロッカー型自動販売機
開発・製造メーカー株式会社マースウインテック
メーカーの主な実績駐車場管理システム、紙幣識別機、パチンコ店舗向け機器、各種自動販売機
ロッカー稼働数全30個(うち生花販売用スペース8個)
決済・管理機能完全電子決済対応、売上・在庫一元管理システム連動
温度管理機能汎用性の高い温度設定(野菜室程度の温度を保ち、お花の鮮度を最適に維持)

丸山氏: 導入しているのは、株式会社マースウインテックというメーカーの製品です。自動販売機や精算機を専門に作られている会社で、そのため、機械の堅牢性やシステムの信頼性が非常に高いのが特徴です。

お花専用というわけではなく汎用性が高い機械なので、賞味期限や消費期限の設定、そして温度管理も私たちが独自に設定できます。お花の場合は、冷蔵庫で言うところの「野菜室」くらいの適切な温度帯で管理し、最高の鮮度が保たれた状態で販売できるように工夫しています。鮮度を保つことはブランドの信頼に直結しますから、「ただ売ればいい」というわけではないと考えています。

無人化がもたらした経営的メリットと、データに基づいたマーケティング

ーー有人店舗から無人店舗へとリニューアルオープンされた後、集客やPR活動はどのように展開されたのでしょうか。

丸山氏: 実は、リニューアルにあたってSNSやGoogleマップ上で大々的な広告を打ったり、積極的に発信したりといったPR活動はほとんど行っていません。Instagramのアカウントは持っており、フォロワーであるお客様はいらっしゃいますが、そこに多額のコストや労力をかけてPRしているわけではないのです。

それでもしっかりとお客様に足を運んでいただけている最大の要因は、やはり「路面店であること」の強みです。加えて、もともとこの場所で数十年かけて営業してきたという歴史があり、地域の方々からの圧倒的な認知と実績があったことが非常に大きく影響していると分析しています。長年の信頼がベースにあるからこそ、新しい形態になっても受け入れていただけたのだと思います。

ーー長く実績がある中で、未来的で新しい運営形態を取り入れられているのは素晴らしいですね。実際に無人運営をされてみて感じる、有人にはない無人のメリットや、逆に今後の課題についてお聞かせください。

丸山氏: まず、有人から無人になったことによる最大の経営的メリットは「店舗に人が立たなくていいので、営業時間の縛りが完全になくなること」です。

スタッフを常駐させる必要がないため人件費が削減でき、定休日を作る必要もありません。お客様のライフスタイルに合わせて、早朝でも深夜でも、好きな時にいつでも来店してお花を買っていただけるというのは、販売側にとってもお客様側にとっても非常に大きな利点です。

ーー無人店舗でのお買い物の際、商品のラインナップ(色や用途)が非常に考えられて作られていると感じます。

丸山氏: そこはかなり意識して調整しています。特に「価格帯」と「色」ですね。店頭に人がいない分、商品そのものの魅力で選んでいただく必要がありますので、これまでの経験とデータを元に売れ筋の色やアレンジメントの傾向を正確に把握し、お客様のニーズを絶対に外さないようなラインナップを展開するよう心がけています。

ーーお客様のリピート率や顧客属性については、無人店舗という性質上、把握が難しい部分もあるかと思いますがいかがでしょうか。

丸山氏: おっしゃる通りで、初期の頃は対面での接客がないため顧客情報を直接取得することができず、実際にどれくらいリピートしてくださっているのかが可視化しづらいという課題がありました。

しかし、利用開始から2年ほどが経過し、現在はシステム上のカメラを活用して、来店されたお客様の性別や年齢層といった属性データを把握できるようになってきました。これによって、どの時間帯にどういった層のお客様がいらっしゃるのか、ある程度の傾向を掴むことができています。現在はまだ本格的なデータ収集が始まった段階ですが、今後は同じメーカーのシステムで詳細な分析まで一貫して行えるようになれば、さらに精度の高いマーケティングが可能になると期待しています。

これからの展望と、全国に広がる「気軽に花が買える」未来

ーー現在、様々な業界で無人販売の利用機会が増え、非常に勢いのあるビジネス分野だと感じています。コロナ禍を機に無人店舗を展開されましたが、今後の事業拡大や新しい取り組みについて教えていただけますでしょうか。

丸山氏: 今後の事業展開としての大きな展望は、さらに多くの方が集まる場所への出店です。

ただ、商業施設となると様々なルールや制約が絡んでくるため、路面店ほど簡単にはいかない部分もあります。また、私たちが一番大切にしている「毎日のケア(鮮度管理のための訪問)」が必要不可欠ですので、私たちが毎日無理なく回れるオペレーションの範囲内であることが絶対条件になります。その条件をクリアした上で、大型の商業施設にも展開できれば、ブランドとして一番良い形になるだろうと考えています。

まずは新潟を中心に実績を積み重ね、新潟を代表する無人花屋として認知されるようになれればと、私自身もこれからの展開を非常に楽しみにしています。

ーー最後の質問になります。丸山様から見て、今後の「お花の無人店舗ビジネス」についてどのようにお考えでしょうか。

丸山氏: 私たちが考えるお花の無人販売の理想形は「お店のフロントには人がいなくても、裏側のシステムと日々のプロフェッショナルな手作業によって、完璧に品質が管理されている状態」です。

ただ機械を置けばいいというものではなく、裏側での丁寧な管理があってこそ成立するビジネスだと考えています。

現在、自販機の導入事例は徐々に増えてきているとメーカーさんからも伺っています。もし今後、「新しく花の無人販売を始めたい」「自販機を導入したい」と検討されている同業者の方がいらっしゃれば、私たちはたまたま先に自販機を導入して様々なノウハウを蓄積していますので、惜しみなくご紹介したいと思っています。

「こういう点に気をつけるとロスが減るよ」「温度設定はこれがベストだよ」といった、実体験に基づいたアドバイスならいくらでもお伝えできます。

私たちは、無人店舗を始めようとする方々をライバルだとは思っていません。どんな形であれ、お客様がもっと気軽にお花を買えるようになるのは、業界全体にとって非常に素晴らしいことだからです。ご相談に来てくださる方々を「仲間」として一緒に業界を盛り上げていくことができれば、全国の至る所で、誰もが気軽にお花を買えるようになる日もそう遠くないと信じています。

店舗情報

HANASHO OWL

営業時間:7:00 – 21:00

定休日:年中無休

住所:〒950-0088 
新潟県新潟市中央区万代1-4-33

アクセス:新潟駅から徒歩10分ほど

公式サイト:https://www.hanasho.info/hanasho-owl/

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