無人店舗の多くは「人件費削減」や「効率化」を主目的としていますが、東京・浅草橋にあるトランプ専門店『うそのたばこ店』の無人化は一味違います。
24時間営業・完全無人でありながら、「常に人がいる」という同店。
お客様同士がコミュニティを形成し、常連客が新規客に買い方を教え、治安までも守られているという独自のスタイルは、どのようにして生まれたのでしょうか。同店の代表にお話を伺いました。
【プロフィール】

大川原 脩平(おおかわら しゅうへい)
株式会社うその 代表
「いっしょうけんめいいきてきた」
学生時代からの起業経験を活かし、クリエイティブな領域や新規事業、採用・教育研修プロジェクトなど多岐にわたる事業を手がける。
- X (旧Twitter): https://x.com/shuhei_ookawara
- Instagram: https://www.instagram.com/shuheiookawara/
友人のお店の「間借り」から始まったトランプ専門店

ーー本日はよろしくお願いいたします。まず簡単に自己紹介と、現在運営されている無人店舗の事業について教えていただけますか。
大川原: 東京の浅草橋で「うそのたばこ店」というトランプ専門店を運営しています。元々は有人で営業していましたが、昨年か今年あたりから完全に無人化しました。基本的にはトランプを販売しているだけなので、販売部分を完全にセルフレジ化して運用しています。
ーー最初からご自身で無人店舗を立ち上げる構想だったのでしょうか?
大川原: 最初は、友人の店の一角にトランプを置かせてもらい、簡単なイベントのようなことをしていました。しかし、ありがたいことにお客さんが来すぎてしまい、友人の店に迷惑がかかるようになって独立せざるを得なくなりました。
ただ、他にも事業を手がけているため、私がずっと店舗に張り付いているわけにはいきません。そこでコロナ前からセルフレジの導入を調べていたのですが、当時はまだ世の中的にも「自分で決済する」という仕組みが一般的ではありませんでした。最初は手書きでお客さんに名札を付けて決済するようなアナログな実験もしましたが、その後システムが整い、自社でもセルフレジ決済の仕組みが回せそうだと判断して、以前から構想していた無人店舗化に踏み切りました。
「無人なのに常に人がいる」独自の防犯・治安維持システム

ーー完全無人化・24時間営業とのことですが、防犯面や治安面での不安はありませんでしたか?
大川原: 当店は「無人店舗」ですが、実は「スタッフ(のような存在)が多くいる」のが特徴なんです。24時間鍵が開いていて誰でも自由に出入りでき、店内には机やテーブルがあります。そのため、夜中にトランプで遊んでいる人や、自発的にイベントを開いて集まっている人たちがたくさんいます。
物理的なスタッフがいない時間はありますが、「常に誰かがいる状態」になっています。治安が悪くなるどころか、当店に長く通ってくださる常連さんたちが、自主的にお店を管理してくれているんです。
ーー常連のお客様が、お店を回してくれているような状態なのですね。
大川原: はい。お客さん同士でコミュニティが形成されていて、初めて来た方にセルフレジの使い方を教えてくれたりもします。地域の方がふらっと来るというよりは、マジシャンやゲーム好きなど、特定の趣味を持つお店のファンが遠方から毎週のように通ってくれています。会社と直接契約しているわけではない常連さんたちのコミュニティによってお店が回っており、常に誰かがいてくれることで逆に治安が守られているという状況です。
ーーなぜそこまで強いコミュニティが生まれたのでしょうか。
大川原: 取り扱っている「トランプ」という商材自体が、マジックやボードゲームなど、特定の趣味のコミュニティとの接続力が非常に強い点が大きいと思います。お店をやっていく中で、偶然と偶然がマッチしてターゲット層に深く刺さったという側面もあります。
無人店舗は「提供者と消費者の都合」が一致したときに機能する

ーー今後、この無人店舗のモデルを拡大したり、店舗数を増やす予定はありますか?
大川原: 今のところ、店舗を増やすことは全く考えていません。 今回の無人化は、現在の物件の条件と、ついてくださっている常連さんやディーラーの方々がうまく噛み合っているからこそ成立しています。無人であること自体は「提供者側の都合」ですが、それが「消費者側の利便性や楽しみ」と一致したときに初めてビジネスとして回ります。公式LINEを通じたコミュニティ形成も含め、この場所だからこそできている独自の形だと考えています。
ーー最後に、ご自身の事業に対するスタンスを教えてください。学生時代から様々な事業を立ち上げられているとお聞きしました。
大川原: そうですね。学生時代から事業を立ち上げたり、現在も採用(Hiring)関連の教育研修プロジェクトや新規事業などに並行して携わっています。今回の無人店舗も、そうした試行錯誤の中で「ニッチな領域で面白い空間を作れるか」という実験的な側面がありました。結果的に素晴らしいコミュニティが育ってくれて、とても価値のある空間になったと感じています。
ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。
【店舗情報】
うそのたばこ店

〒111-0053 東京都台東区浅草橋3-4-2 三田ビル1F
・24時間営業(無人・キャッシュレス決済のみ)
・木~日午後はマジックディーラースタッフが在店
公式サイト: https://usonotobacco.com