無人店舗研究所 UNMANNED RETAIL LAB

【インタビュー】レンタルドレス事業は無人で成立するのか?SEOコンサルタントが実店舗経営で得た事実とデータ

ウェブ集客やSEOコンサルティングの領域で長年キャリアを築き、現在は独立してご自身の会社を経営されている小林氏。
現在もデジタルの最前線にいる同氏が、新たな事業として選んだのは、実店舗である「完全無人のレンタルドレス店」でした。
現在、埼玉県さいたま市の東大宮と群馬県太田市の2拠点で店舗を運営されています。IT領域の専門家が、なぜ物理的な商品を扱う無人店舗事業に参入したのか。店舗立ち上げの経緯や、実際のデータから見えてきた無人店舗ならではの顧客需要について、率直なお話を伺いました。

【プロフィール】

小林 和也 代表

  • 大学在学中に2年間インターンシップとしてSEOコンサルティング業務を経験
  • 新卒でインターネット広告代理店に入社し1年半勤務
  • オリジナルTシャツ作成サービス運営会社に入社し事業責任者、執行役員CMOを経験
  • 上記入社と同時に個人でSEOコンサルティング業務を開始
  • 2024年フェイセルパートナーズ合同会社立ち上げ
  • 2026年4月カリドレ プレオープン

ーー本日はお時間をいただきありがとうございます。まずは、小林様のこれまでのご経歴から伺ってもよろしいでしょうか。

小林氏:
はい、よろしくお願いします。もともとは10年ほど前になりますが、新卒でSEOやインターネット広告を扱うウェブコンサルティング会社に入社しました。実は学生時代にも2年間ほどコンサルティング職種で長期インターンをしていたので、かなり長い間ウェブ集客の分野に携わってきました。

その後、前職ではWeb上でオリジナルTシャツを作成するサービスのマーケティング担当として参画しました。ユーザーがどのようなキーワードで検索し、購買に至るのか調査し、キーワード毎に最適なページを作成する作業をひたすら繰り返しました。結果、「オリジナルTシャツ」を始めとしたさまざまなキーワードで上位表示し、毎年高い売上成長を牽引してきました。

その後は幅を広げ、新商品の追加や新機能の追加といったサービス改善、お客様対応も自ら行い、そこで見えたお客様の声をもとに従来の運用上の課題を改善してきました。事業責任者、執行役員のCMO(最高マーケティング責任者)を務め、計7〜8年ほど在籍していました。

ーーそこから、ご自身で独立されたのですね。

小林氏:
いえ、前職への入社と同時に個人でのSEOコンサルティング業務も開始しました。また、そのクライアントと共同経営でBtoB通販事業会社を立ち上げておりこちらも現在売上が成長しています。今カリドレ http://karidore.jp/ を運営している当法人自体は2023年に立ち上げており、その2年後の2025年3月にTシャツの会社は退職しました。現在は業務委託という形で手伝いながら、カリドレを運営するフェイセルパートナーズ合同会社をメインに稼働しています。

SEOコンサルティングはクライアントごとの事業方針や体制に合わせて支援を行っています。一方で、経験を重ねるうちに、集客だけでなく、商品や価格、サービスの仕組みまで自分で意思決定し、その結果に責任を持って事業を育てたいという思いも強くなりました。そうした考えから、新たに挑戦したのが「レンタルドレスの無人店舗カリドレ」です。

ーーデジタル領域で活躍されてきた小林さんが、なぜ「無人店舗」というリアルな実事業を選ばれたのでしょうか。

小林氏:
コンサルティングは、担当者の専門性や経験がサービスの質に直結する仕事です。事業を拡大するには採用や育成が重要になりますが、次の事業では、個人の能力だけに依存せず、仕組みで運営できる形に挑戦したいと考えていました。

そこで関心を持ったのが、スタッフが常駐しなくても、お客様自身で商品を選び、利用できる無人店舗です。私自身が地方出身ということもあり、運営の仕組みを整えられれば、地方にも展開できるのではないかと考えました。

ーーそこで「レンタルドレス」を選ばれたのは、やはり前職でのアパレルのご経験があったからですか?

小林氏:
そう思われがちなのですが、実はそこに対する強いこだわりはなかったんです。人が関わらない様々な事業モデルを探している中で、他社さんが先行してやっているレンタルドレス事業を見つけて、純粋に面白いなと。

レンタルドレス事業自体の経験は全くなかったので、それこそゼロから全て調べました。この事業の仕組みで特に面白いと感じたのは、「地方にはまだほとんど存在していない」という点です。東京、大阪、福岡などの都心にはいくつもあるのですが、地方では見かけない。そこにチャンスがあると考えました。

ーー店舗の立ち上げや運営は、妹さんとお二人でされていると伺いました。

小林氏:
はい。妹はもともと看護師として働いていたのですが、彼女自身にも「事業をやってみたい」という気持ちがありました。ドレスは女性向けの商材ですので、私一人でやるよりも妹を責任者にした方が相性が良いと考えたんです。

妹は今20代後半で、まさに結婚式などでドレスに関わる機会が多いタイムリーな年齢層です。彼女の成長やチャレンジの機会にもなると思いました。役割としては、私がビジネスの全体的な仕組みを作り、妹がドレスの仕入れや内装のデザインといった実務面を担当しています。

ーー初めての店舗づくりということで、立ち上げ時に苦労されたことはありましたか。

小林氏:
一番は内装工事ですね。思った以上にお金がかかってしまって。私たちに経験がないため、内装業者さんの見積もりが妥当なのかどうかの判断がしづらく、どこまでこだわるべきかすごく悩みました。

ただ、いかにも無人です、コストを抑えました、という雰囲気があるとせっかくの結婚式に向けた明るい気持ちが台無しになると思います。やはり女性向けのサービスですから、明るくて気分の上がる空間にしたい。そして無人でもホスピタリティを感じてもらえる店舗にしたい。その「どこまでこだわるか」のバランス調整が難しかったですね。

ハンドクリームを使える嬉しい心配りも

ーー仕入れに関しても、未経験からのスタートですよね。どのように進められたのでしょうか。

小林氏:
ずっと手探りでした。色々なサイトを見て人気のドレスを調べ、まずはそこから仕入れてみるという形です。最初はサイズとカラーをバラバラに仕入れてみたんです。S~Mサイズで明るめの可愛らしいドレスが人気になるのではと想定をしていましたが、実際に稼働してみると、我々の想定とは違う結果が出ました。「2L」や「3L」といった、大きいサイズのドレスが非常によく借りられたんです。これは、無人店舗だからこそ拾い上げられた「コンプレックス需要」だと思っています。

普通の有人店舗だと、店員さんがいると気まずかったり、試着しづらかったりしますよね。そういう悩みを持っている方が、「誰の目も気にせずに気軽に利用できる場所」として無人店舗を選んでくださっているケースは多いのだと思います。

S・M・Lだけではカバーできないサイズにも明確な需要があることが分かったので、立ち上げ初期の段階で急いで大きいサイズを追加で仕入れました。
また、色も黒やネイビーといった落ち着いた色が圧倒的に人気でした。ここも当初の想定と大きく乖離がありました。

ーーお客様の年齢層によって、選ばれるドレスの傾向に違いはありますか。

小林氏:
はい、ご予約時に年齢を入力いただいておりますが、毎月の売れ筋分析データを見ると傾向が分かれます。若い女性のお客様は、明るめの色や「Sサイズ」を選ばれることが多いです。一方で、年齢層が上がるにつれ落ち着いた色(黒などシンプルなドレス)で、サイズも大きめのものを選ばれる傾向があります。現在もこうしたデータを分析しながら、ラインナップや値段の調整を進めているところです。

ーー「誰の目も気にしなくていい」という点では、子育て世代の方にもメリットがありそうですね。

小林氏:
おっしゃる通りです。完全貸し切りの無人空間なので、小さなお子さん連れでも全く問題ありません。通常、お母さんが試着をする時はどうしても周りのお客さんや店員さんに気を使いながらになってしまいますが、うちの店舗なら足元でお子さんが遊んでいても、誰も気にすることなく自分のペースで選べます。当店は赤ちゃん連れ大歓迎のお店で

  • ベビーサークル
  • 絵本
  • 音の出るおもちゃ
  • 赤ちゃんと一緒に入れる広い試着室

をご用意しています。こういった空間を提供できるのは無人店舗ならではだと思います。
私も妹も子育て世帯ですので、赤ちゃん連れの悩みは良くわかっているつもりです。

赤ちゃん連れにも優しい空間作りが利用者の方にも喜ばれているポイント

ーー現在は埼玉県と群馬県で2店舗を運営されていますが、これは同時にオープンされたのでしょうか。

小林氏:
結果的にそうなりました。もともとは大宮駅の近くに出店したかったのですが、24時間無人で営業できる物件がなかなか見つからず、あっても家賃が非常に高かったため断念しました。

そんな時、私の地元の群馬県太田市で「シャンブルドット」というカフェを経営している友人が、建物を丸ごと購入して「2階が空いている」と声をかけてくれたんです。フランスアンティークの雰囲気を大切にしているカフェで、内装づくりも手伝うと言ってくれたので、まずは実験的に、その友人のビルを借りてスタートすることになりました。

ただ、その群馬の方を準備している最中に、今私たちが住んでいる家から徒歩圏内の東大宮の駅前に空き物件が出ているのを知りまして。それならそちらもスタートしようということになったんです。

ーー偶然のタイミングが重なって2店舗同時になったのですね。

小林氏:
はい。ただ、初期投資が想定のほぼ倍になってしまったので、「一気にやりすぎたな」という思いは正直ありますね(笑)。

私たちが直接店舗に足を運ぶ頻度としては、東大宮の方には週2~3回行き、群馬の店舗には月に2回程度、その他アルバイトのスタッフが毎週1回以上清掃に入ります。東大宮は日中予約がずっと入っているのでお店に入れるのは22時以降。群馬はまだ空きが多いですが、片道1時間半かかりますので行けるタイミングを作ることが難しいですね。

ーー現在の集客や、店舗のシステム面についてはいかがですか。

小林氏:
集客に関しては、私の専門知識を活かしてほぼ「SEO対策一本」です。「ドレスレンタル」や「大宮 ドレスレンタル」といったキーワードで上げていくのが結局一番だと考えています。
システムとしては、予約管理には「セレクトタイプ」という外部のサービスを使っています。在庫管理に関しても、通販サイトの仕組みを利用して商品をすべて登録しておくことで対応しています。

ーー無人店舗で物理的な商品を扱う上で、課題に感じている点はありますか。

小林氏:
やはり、ドレスという「物」を扱っているため、お客様によって使い方に個人差が出る点ですね。汚れや破損、クリーニングなど、無人とはいえ物理的なメンテナンスはどうしても発生します。修繕やクリーニングは全て自社で行っておりますが、ここのクオリティを上げることがお客様満足度の向上につながると思うので、クリーニング技術の向上と効率化が課題です。

ーー最後に、今後の事業展開についての見通しを教えてください。

小林氏:
店舗は4月にオープンしたのですが、特に9月は、取材時点で8月のほぼ2倍の売上ペースとなっています。急激にレンタルが増えたことで、ドレスも小物も貸出中の商品が多くなり、機会損失も発生しています。

まずは来店されたお客様に満足していただけるよう、品揃えをさらに強化したいです。それと、年内から来年の早いうちには、店舗の商品を配送でもレンタルできるようにして、全国に手頃な価格でドレスを届けていければと思っています。
1年ほど運営して、季節ごとの需要なども分かってきたら、さらに店舗を増やすことも考えていきたいですね。


無人レンタルドレスショップ カリドレ

東大宮店:http://karidore.jp/
太田店:http://karidore.jp/ota/

運営:フェイセルパートナーズ合同会社
代表:小林 和也

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