無人店舗研究所 UNMANNED RETAIL LAB

「24h無人ホルモン直売所」を体験してみた|スーパーより高い肉が無人で売れる理由

こんにちは!無人店舗研究員です🧑‍🔬

無人店舗研究所では、実際に無人店舗に行き、利用者として体験しながら「無人ビジネスとしてどう設計されているか」を検証しています。

今回訪れたのは、東京・墨田区にある「24h無人ホルモン直売所 墨田石原店」。冷凍のホルモンや焼肉用の肉を、24時間いつでも買える無人販売店です。

この記事では、外観から決済、実食までの体験をレポートしつつ、後半では公開されている収支データをもとに「無人ホルモン販売は事業として儲かるのか?」まで踏み込んで検証します👊

「無人ホルモン直売所 墨田石原店」の基本情報

交差点の角地に立つオレンジ色の店舗。遠くからでもよく目立つ
店舗名24h無人ホルモン直売所 墨田石原店
場所東京都墨田区石原2-25-5(交差点「若宮公園東」の角地)
営業時間24時間365日
料金全品1,000円均一(タレ・酢味噌などは500円)
予約・会員登録不要
決済現金(料金箱・おつりなし)・キャッシュレス(PayPay、クレジットカードなど多数)
運営合同会社藤(岩手県一関市)。全国約230店舗を展開

体験レポート|外観から実食まで

とにかく目立つ外観!

店舗はオレンジ色を基調とした外観で、大きな看板つき。交差点の角地ということもあり、街を普通に歩いていても「なんだろう?」と気になるくらい目立ちます。

無人店舗は、まず存在に気づいてもらうことがスタートライン。広告費をかけずに通行人に認知してもらえるこの「目立つ外観」は、良い設計だと感じました。

店内は明るく、POPだらけ

店内に入ると、明るくて清潔感がありました。無人で食品を売る店舗は、この清潔感に安心できます。

大きな冷凍ストッカーが並び、そこから商品を自分で選ぶ形式です。壁を見渡すと、商品紹介のPOPがずらり。ホルモンだけでかなりの種類があることが一目で分かります。

白基調の明るい店内。冷凍ストッカーから商品を選ぶ

POPの内容は商品紹介だけでなく、創業ストーリーや、商品を使った料理例、「和牛」と「国産牛」の違いの紹介、などもありました。

創業ストーリーやこだわり、和牛と国産牛の違いなどが案内されています

和牛と国産牛の違いは、恥ずかしながらよく知らず、このPOPを読んで知りました。

💡

和牛と国産牛の違い
国産牛は日本国内で一定期間飼育された牛を広く含む呼び方。和牛は日本の在来種をもとにした特定品種のこと。この店で扱うのは和牛、それも黒毛和牛だそうです。

「和牛は国産牛よりかなり高いのに、その違いが消費者に知られていない」という説明があることで、価格が高い理由を理解しやすくなっていました。スタッフが口頭で説明できない無人店舗では、POPが店員の代わり。それを実感する売り場でした。

チャートがあると選びやすくて助かる!

購入と決済|料金箱とセルフレジの二本立て

購入したのは「特選和牛ホルモン味噌」(250g・1,000円)と、冷凍生餃子(36個入・1,000円)。商品は基本的に全品1,000円均一です。

ホルモン屋なのに餃子を買ってしまった。やっぱり餃子は買いたくなる…

決済は現金とキャッシュレスの両方に対応していました。

現金の場合は、1,000円均一なので購入した袋の数だけ1,000円札を料金箱に入れるだけ。均一価格だからこそ成立する、かなりシンプルな仕組みです。

木製の料金箱(右)とキャッシュレス専用のセルフレジ端末(左)

キャッシュレスの場合は、店内のモニターを操作します。

  1. 画面のメニューから購入する商品を選ぶ
  2. 決済ボタンを押す
  3. モニターにQRコードが表示される
  4. 自分のスマホでQRコードを読み取って決済する

QRコードをスマホで読み込むと以下の支払い画面が表示され、決済ができる仕組みです。

「監視されている感」があるセキュリティ

店内には防犯カメラが5台。小規模な店舗としては多い印象です。現金の料金箱の斜め上にもカメラが設置されていて、「支払いを見られている」ことが視覚的に分かるようになっていました。

さらによかったのが、セルフレジの操作音です。モニターを操作するとかなり大きめなタッチ音が鳴り、店内に音が響くことで「誰かが購入操作をしている」ことが分かる。こっそり何かをしにくい雰囲気につながっているように感じました。

カメラや音で「監視されている」感を出す設計は、やはり無人店舗には欠かせないセキュリティですね。

実食|臭みなし、焼肉屋の品質!

帰宅後、特選和牛ホルモン味噌を野菜と炒めてみました。臭みはまったくなく美味しい!

特選和牛ホルモン味噌の野菜炒め

ちなみに帰り道、ホルモンの価格感を知りたく、この店舗の最寄りのスーパー「サミット」のホルモン売り場も見てきました。スーパーのホルモンは、この店の半額程度の価格感でしたが、アメリカ産。品質が全く違いそうです。

サミットのアメリカ産ホルモンは100gあたり198円。無人ホルモン直売所のホルモンは、100gあたり400円。

私程度の人間は、焼肉用の肉であれば、どこ産でも、味にさほど大きな差は感じることができませんが笑、ホルモンは品質が良くないと臭みがありそうなので購入するのも躊躇ってしまうかも。

なので、「焼肉屋クオリティのホルモンを気軽に安心して購入できる」この無人ホルモン直売所は、ホルモン好きにとても向いていると思いました

気になったところ・改善アイデア

1. 入口まわりの管理

店内入り口に、空のチラシボックスとまっさらな立て看板があり、「管理、大丈夫か…?」と一瞬不安になりました。

スタッフの姿が見えない無人店舗では、こうした細部から「きちんと運営されているか」が判断されると思うので、設備を置くならきちんと運用し、使わないなら撤去したほうが印象は良さそうです。

以前体験した無人マッサージ店でも感じたことですが、無人店舗では「管理されている感」をどう見せるかが、リピートを左右する大きな変数なのかもしれません(詳しくはちょこま浅草橋の体験記事で書いています)。

2. 価格の価値をさらに伝えたい

250gで1,000円は、スーパーと比べるとどうしても高く感じやすい価格です。和牛・黒毛和牛であることのPOP説明は良かったのですが、「どんな品質基準なのか」「味や食感がどう違うのか」まで伝えられると、「高い」ではなく「この品質なら1,000円」と納得してもらいやすくなりそうです。

ビジネスとして見る「無人ホルモン直売所」|全品1,000円は儲かるのか

ここからは無人店舗研究所の本領として、事業として検証します🧑‍🔬

運営元は岩手の焼肉店。コロナ禍から230店舗へ

運営する合同会社藤は、岩手県一関市の焼肉店「いわて焼肉会館」から始まりました。コロナ禍で店を開けられなくなった際、店頭に冷凍庫を置いて食材を売り始めたところ月商120万円に達し、2022年から本格的に無人販売を展開。フランチャイズを含めて全国約230店舗まで拡大しています(出典:ビジネスチャンス2024年4月号ほか)。

食材は、真空パック+瞬間冷凍で賞味期限が2年。食品販売で一番のリスクとなる売れ残りの廃棄ロスを、最小限に抑えられています。(賞味期限が長いのは、私たち利用者側にとっても助かる話ですね)

そして全品1,000円均一。おつりのいらない料金箱運用を可能にしつつ、「何パック売れたら黒字か」が数えやすい価格設計です。

研究員の試算|1日8〜12パック売れれば黒字

FC募集向けに公開されている収支モデルによると、原価率は58.5%。つまり1,000円のパックが1つ売れると、手元に残る粗利は約415円です。

墨田石原店のケースで、月々の固定費を計算してみます🧑‍🔬

項目推定額(月)前提
家賃5〜10万円公開モデルの5万円に都内相場を加味
電気代約2万円冷凍ストッカーの24時間稼働。公開モデルを参照
ロイヤリティ・雑費等約3万円FC公表値を参照
合計約10〜15万円

この固定費を粗利率41.5%で割り戻すと、損益分岐は月商24〜36万円。つまり1日に8〜12パック売れれば黒字になる計算です。

※上記は公開情報と相場をもとにした研究員の推定であり、実際の契約条件・収支とは異なる可能性があります。

ちなみに運営元の公開情報では、1店舗の想定売上は月30〜40万円とのこと(出典:ビジネスチャンス2024年4月号)。あくまで推定同士の比較ですが、この想定売上と損益分岐のレンジは意外と近い位置にあるようにも見えます。だとすると、余裕たっぷりというよりは1日あたり数パックの売れ行きの差が収益を左右しているかもしれません。

まとめ

最後に、体験を通して見えたポイントをまとめます。

  • スタッフがいない分、POPが店員の代わり。商品の背景や価値までしっかり伝えられれば、スーパーより高い商品でも買ってもらえそう
  • 防犯は隠さず「見せる」。カメラや操作音で「見られている」と感じてもらうこと自体が、悪いことをしにくい空気につながる
  • 一方で、空のチラシボックスや白紙の看板があると「管理されているか」少し不安になる。細かいところこそ手を抜けない
  • 冷凍で売れ残りのロスを防ぎ、全品1,000円で会計をシンプルに。研究員の試算では1日8〜12パック売れれば黒字の目安で、毎日それだけ売れる場所を選べるかが大事になりそう

無人販売で、スーパーより高い商品をどう売るか。この店の答えは「価値を伝えるPOP」と「安心させる店づくり」でした。無人ビジネスを考えている方には見どころの多いお店だと思います。近くに店舗があれば、ぜひ一度体験してみてください。

※本記事は研究員が自費で利用した体験にもとづいており、運営会社との利害関係はありません。

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