無人店舗研究所 UNMANNED RETAIL LAB

無人マッサージ「ちょこま」を体験してみた|10分300円は儲かるのか損益分岐を試算

こんにちは!無人店舗研究員です🧑‍🔬

無人店舗研究所では、実際に無人店舗に行き、利用者として体験しながら「無人ビジネスとしてどう設計されているか」を検証しています🔬

今回は、東京・浅草橋駅から徒歩2分の無人マッサージ店「ちょこま浅草橋」。予約不要・24時間営業・10分300円という手軽さで、東京を中心に店舗拡大中の注目の無人ビジネスです。

この記事では入店から決済、マッサージ体験までの流れをレポートし、さらに公開されている収支データと編集部の試算をもとに、「無人マッサージは事業として成立するのか?!」まで踏み込みます🧑‍🔬

「ちょこま浅草橋」の基本情報

浅草橋駅から徒歩2分!総武線高架下にあり。白いマッサージチェアが外からよく見える
店舗名無人マッサージ屋ちょこま 浅草橋
場所東京都台東区浅草橋1-17-10(浅草橋駅徒歩2分)
営業時間24時間365日
料金10分300円 / 20分600円 / 30分900円
予約・会員登録不要
決済現金・キャッシュレス(PayPay、クレジットカード、メルペイなど多数)
設備業務用マッサージチェア「あんま王Ⅳ」×4台
運営合同会社あさあさ(全国24店舗を展開 ※2026年8月時点)

体験レポート|入店からマッサージ開始まで

ドアを開けるだけ。予約も登録も一切不要

研究員が訪問したのは2026年8月中旬の土曜日15時ごろ。ちょこまは予約制ではなく、会員登録もアプリのダウンロードも必要ありません。ドアを開けてそのまま入るだけという手軽さ。

また、ドアには料金表や支払い方法のPOP、使い方動画がモニターで見れるようになっており、入店ハードルを下げています。

無人店舗は「初回利用のハードル」が課題になりがちですが、ちょこまの入店ハードルは限りなく低いと感じました。

店の前では、通りかかった人が「無人マッサージ…?」という様子で足を止めて看板を眺めていく場面もあり、業態そのものが人の興味を引いていることがうかがえます。

スリッパの「定位置」が床に示されている

入口では靴を脱ぎ、用意されたスリッパに履き替えます。ここで目を引いたのが、スリッパを戻す位置が床に示されていたことです。

4足目の戻す位置も欲しいところですが 笑

張り紙で「スリッパは揃えてください」と書くのではなく、置き場所を視覚的に示すことで自然と整う。小さな工夫ですが、無人店舗の行動設計として参考になるポイントです。

決済からマッサージ開始まで、人の介在がゼロ

店内にはあんま王Ⅳが4台。各チェアの横には現金投入機が設置され、その脇にキャッシュレス決済のQRコードが貼られています。

チェア横の現金投入機。キャッシュレス派はQRコードから

スマホでQRコードを読み込むと決済画面が立ち上がり、コース(10分/20分/30分)を選択。決済方法はPayPay、Apple Pay、クレジットカード、各種Pay系に加え、Alipay+やUnionPayといったインバウンド向けまで幅広く対応していました。

豊富な決済方法

決済が完了すると、マッサージチェアがそのまま自動で動き始めてとってもスムーズ!決済システムとチェアが直接連動しています。運営者によれば、この決済システムはメーカーと共同開発した専用のものだそうです。

あんま王Ⅳは「全身やってもらっている感」がすごい

白い繭のようなあんま王Ⅳ。フードを下ろすと半個室のような没入感がある

マッサージチェアというと首・肩・背中・腰が中心というイメージですが、あんま王Ⅳはそれに加えて腕・手・ふくらはぎ・足・足裏までしっかりとマッサージしてくれました。特に手や足裏までしっかり揉んでくれる点は予想以上で、「全身をやってもらっている」感覚がありました。

あんま王Ⅳが気になり、販売価格を調べてみたところ、なんと50万円以上の高級マッサージチェアでした(一般的な家庭用マッサージチェアは15万〜高くても30万円ほどでしょうか)。それを10分300円で使えるのはかなり嬉しいサービス。

2026年8月現在の価格

もし買えたとしても、こんな大きなもの、家に置いておけないし…無人店舗でみんなでシェアして使う。とてもおもしろい発想だなと思いました。

利用者として感じた、無人ならではの価値

人目を気にせず行ける

無人であることの最大のメリットは、今回のマッサージ店に限らずですが「誰にも会わずに利用できる」こと。

たとえば「メイクをしていない…」「髪の毛がぼさぼさ…」そんな状態でも、店員さんと顔を合わせないので気兼ねなく入れる。

有人のマッサージ店では、マッサージ師さんとの会話や「人に会う」こと自体に多少のエネルギーを使わなければなりませんが、疲れているときこそその負担は大きいもの。「疲れたからマッサージに行きたい、でも人と話す元気はない」という状態と、無人マッサージは非常に相性が良いと思いました。

空間そのものが接客する

壁に貼られた「ごあいさつ」。創業の想いが利用者に直接届く

店内の壁には、「なぜこの店を始めたのか」を綴ったごあいさつが貼られていました。ちょこまはご夫婦2人で運営されており、「マッサージチェアが大好きで、もっと気軽に使える場所を作りたかった」という創業の想いが、手描きイラストとともに語られています。看板のデザインから内装の施工まで自分たちの手で行っているそう。

さらに、店内に流れるピアノのBGMには「現在流れているのはこのピアニストの楽曲です」という紹介掲示があり、気に入った人が楽曲を購入できるQRコードまで用意されていました。

店内BGM ピアニストさんの紹介POP

一般的な有人店舗で、店員さんから「なぜこの店ができたのか」「いまかかっているBGMは…」なんて話、聞いたことはあるでしょうか。親しく話していれば起こり得るかもしれませんが、なかなかないことだと思います。

無人店舗だと、無人だからこそ、店内の掲示物をじっくり眺められる、そしてそこで、オーナーの想いや工夫を伝えられる。無人店舗の方が、店の世界観を全ての利用者に伝えられるのかも。と思ったりしました。

一番気になった点|清潔感

良い点ばかりではなく、正直に気になった点も。

店内には次亜塩素酸系の消毒スプレーが壁掛けで設置され、利用者が自分でチェアを拭けるようになっています。「チェアにそのまま座るのは抵抗がある…」と正直思っていたので、このスプレーを見かけて安心しました…

一方で、チェアにかけられている拭き取り用の布巾を見て「これはどのくらいの頻度で洗われているのだろうか…」と気になったのも事実。壁の掲示物にも、貼り方が曲がっていたり印刷がにじんでいたりするものがあり、細部の管理感はもう一歩という印象でした。

拭き取り用の布巾
印刷がにじんでいるPOP

床にゴミが落ちているわけでもない。気になる匂いがしたわけでもない。最低限の清潔感は満点でした。なので、上記の気づきは細かすぎるかもしれません。けれども、マッサージという業態だからこそ、清潔感は一番に考慮すべきポイントかもしれません。

マッサージは「身体が設備に触れる」業態

清潔感の重要度は、無人ビジネスの業態によって大きく異なります。たとえば無人餃子販売所なら、利用者が設備に長時間触れることはありません。しかしマッサージチェアは、体が直接設備に触れるサービス。だからこそ「きちんと清掃されているのか」が、利用体験の評価に直結すると思います。

そして無人店舗は、スタッフが掃除している姿を、利用者は一度も見ることがありません。実際にどれだけ丁寧に清掃していても、利用者からは確認のしようがありません。

清潔さに気を遣っていることを視覚的に伝えたい

そのため、こういった清潔感が特に大切な無人サービスでは「清掃していること・清潔さに気を遣っていることを利用者に伝える設計」をプラスすると良いかもと感じました。

例えば、コンビニのトイレなどでよく見かけるような清掃チェック表を、あえて利用者から見える場所に掲示する方法。「◯時◯分 清掃済み」という記録が見えるだけで、「管理されている店だ」という安心感は大きく変わります。ほかにも、

  • 掲示物を常にきれいな状態に保つ(にじんだ印刷物や古いPOPは交換する)
  • 拭き取り用布巾を利用者が新しいものに取り替えられる
  • 「清掃に気をつけている」ことをPOPで伝える

などの方法があるかもしれません。

現状でも十分なリピート率を維持しているサービスかもしれませんが、そのような細かい部分をさらに改善することで、さらなるリピート率向上が目指せるかも、と感じました。

セキュリティ|「盗まれるものがない」業態

無人ビジネスを検討するにあたり、一番気になるのがセキュリティ面。その点、マッサージ店には持ち去れる商品がなく、最大の資産であるチェアは運び出せない重量物。売上もキャッシュレス中心で、「盗む対象」が構造的にありません。

残るリスクは喫煙や居座りといった「人の振る舞い」ですが、店内には防犯カメラが2台あり、無人でも「見られている」感覚は確かにありました。カメラは盗難対策というより、ルールを守らせる方向に効いていると感じます。迷惑行為には金銭請求を行う旨の掲示もありました。

壁の棚に設置された防犯カメラ。「見られている」感覚がルール順守につながる

さらに、全面ガラス張りの路面店で通りから店内が丸見えという造り自体が防犯装置になっています。代表の森俊彦さんも「路面店であること自体が、最高のセキュリティになる」と語っていました(引用:フランチャイズ加盟募集.net)。無人店舗のセキュリティは設備ではなく設計で作る、という素晴らしい例です。

利用客の裾野は想像より広い|高齢の方が入店

私が利用したのは土曜の15時ごろで、4台とも空いており他の利用者はいませんでした。ただ、退店するときに入れ替わりで、70歳くらいの女性が入店されました。

無人店舗は若年層向けと思われがちですが、「マッサージ」となると高齢者の利用も多そうです。浅草橋という立地を考えると、近隣の高齢者、仕事帰りの会社員、近くで働く人の休憩需要など、利用者の裾野は想像より広そうです。

ビジネスとして見る「ちょこま」|10分300円は儲かるのか

ここからは無人店舗研究所の本領として、事業としてのちょこまを検証します🧑‍🔬

運営者が公開している数字

ちょこまはフランチャイズ展開をしており、収支に関する数字がかなりオープンです。公開情報を整理すると…

  • 店舗面積は10〜20㎡(約3〜6坪)、平均約15㎡という最小クラス
  • 平均月商は約25万円。「オープン月を除き全店舗で全月黒字」(チェアメーカー日本メディックの2025年10月発表)
  • 1店舗あたりの年間利用者は8,000人以上(1日あたり20人強)
  • FC収支モデルは月商約26.65万円、経費約19万円、月間利益6.5〜7.5万円
  • 初期投資は約320万円、回収期間3〜4年

編集部試算:損益分岐は「1日9〜13人」

浅草橋店(チェア4台・直営店)のケースで、編集部が月間の固定費を計算してみます(チェアは自前購入する前提です)。

項目推定額(月)前提
家賃9〜15万円約6坪 × 高架下相場 坪1.5〜2.5万円
チェア償却約3.9万円あんま王Ⅳ 実勢約58万円×4台を5年償却
水道光熱・通信等約4万円FC公表の運営費モデルを参照
合計約17〜23万円

※上記はあくまで公開情報と相場をもとにした研究員の推定であり、実際の契約条件・収支とは異なる可能性があります。

損益分岐は月商17〜23万円なので、例えば1人あたり20分600円利用するとして、1日に9〜13人来れば黒字になる計算です。24時間営業で1日9〜13人。ハードルの低さがわかります。

なお、これは直営(自前でチェアを購入して開業する)前提の試算です。FCに加盟する場合は固定費は異なります。

そして前述のとおり、ちょこま運営者の公開実績は「1日20人強」なので、分岐ラインの2倍前後で回っている構図です。「全店黒字」という発表にも納得がいきます。

なぜこんなに損益分岐が低いのか

現地で観察した内容が、この数字を裏付けています。

  1. 超小面積:チェア4台と通路だけ。20㎡あれば成立するため、家賃の絶対額が小さい
  2. 人件費ゼロ:運営者の業務は清掃・集金・メンテナンス程度
  3. 設備の消費電力が小さい:チェアの銘板には消費電力110Wとありました。フル稼働してもドライヤーの10分の1程度で、電気代の大半は空調と照明です
  4. 内装コストの圧縮:浅草橋店は看板から内装まで運営夫婦のDIY。防犯カメラも家庭用の小型カメラを活用しており、「かけないところには徹底的にかけない」姿勢が見えます

代表の森俊彦さんはインタビューで「出店が9割。場所を間違えなければ負けることはありません」と語っています(フランチャイズ加盟募集.net)。固定費がここまで軽ければ、勝負は「1日数人が立ち寄る立地を選べるか」にほぼ集約される。駐車場やコインランドリーに近い、設備稼働型ビジネスの構造です。

まとめ

最後に、体験を通して見えたポイントを挙げていきます。

  • マッサージと無人の相性は良い。予約不要・短時間・低価格・会話不要という特性が、「疲れているときにふらっと寄る」需要と噛み合っている
  • 空間そのものが接客ツールになる。POP・掲示・BGMで、有人店舗では伝えきれない世界観を伝えられる
  • 一方で、身体が設備に触れる業態では清潔感が生命線。実際の清掃に加えて「清掃の見える化」が、リピートを左右する。
  • 事業構造としては損益分岐が極めて低い設備稼働型。編集部試算で1日9〜13人。成否は立地選定に集約される

私自身の結論を正直に書くと、マッサージの内容と価格には満足しており、家の近くにあって清潔感への安心が得られれば、また利用したいと思えるサービスでした。逆に言えば、リピートを左右する最大の変数は、マッサージの質でも価格でもなく「管理されている感」だったということに気づきました。

無人店舗の競争力は「人がいないこと」ではなく、「人がいなくても安心できること」。無人ビジネスは、オペレーションの自動化とあわせて、「安心をどう見せるか」まで設計することが大切そうです。

※本記事は編集部が自費で利用した体験にもとづいており、運営会社との利害関係はありません。

関連記事

RELATED