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ラストワンマイルの無人配送はどこまで実装されたか|配送ロボットと受取方法の多様化

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宅配の無人化というと、歩道を走る小型ロボットや空を飛ぶドローンが思い浮かびます。実際に制度も整備され、公道での運用は始まっています。ただ、いま現実に配送現場の負荷を下げているのは、その手前にある別の変化です。

数字を並べると、その構図がはっきり見えてきます。ここでは、ラストワンマイルの無人化がどこまで到達したのかを、公表されている調査結果と制度の中身から確認します。

ラストワンマイルが物流の最後の難所である理由

ラストワンマイルが物流の最後の難所である理由

電子商取引の拡大が、配送量を押し上げ続けてきました。国土交通省の資料では、令和6年度の宅配便の取扱個数は約50億個とされています(国土交通省 令和7年10月の宅配便の再配達率は約8.3%)。

この一つひとつが、最終的には誰かの玄関先まで運ばれます。幹線輸送であれば1台のトラックが大量の荷物をまとめて運びますが、ラストワンマイルは荷物ごとに停車と歩行と受け渡しが発生します。積載効率を上げても、玄関の数だけ動作が要る構造は変わりません。人の手数が減らない理由がここにあります。

受け取り手が不在だと工数が二重になる

さらに厄介なのが、届けた先に人がいない場合です。持ち帰って再び届ければ、同じ荷物に対して二重の工数がかかります。ドライバー不足が深刻化するなかで、この再配達をどう減らすかが政策上の焦点になってきました。

再配達は減っているが、主役は無人ロボットではない

再配達は減っているが、主役は無人ロボットではない

国土交通省は年2回、宅配便の再配達率と多様な受取方法の利用率を調査しています。直近の結果は次のとおりです。

調査時期 再配達率 多様な受取方法の利用率
2025年10月 8.3% 29.9%
2026年4月 7.6% 31.0%

2026年4月の調査では、多様な受取方法の利用率が31.0%となり、前回調査から1.1%増加しました。同じ発表資料には再配達率も併せて示されており、前回比0.7%減の約7.6%に下がっています(国土交通省 宅配便の多様な受取方法の利用率は約31.0%)。受取方法の調査を始めた2025年2月時点の利用率は25.6%だったので、1年あまりで5ポイント以上動いた計算になります。

注目すべきは、この2つが連動していることです。再配達が減ったのは、ロボットが配り始めたからではありません。宅配ボックスや置き配といった、受け取り側の方法が変わったからです。

再配達が起きる場所には偏りがある

同じ調査では、地域区分ごとの再配達率も公表されています。2026年4月の宅配便の再配達率は、都市部が8.5%、都市部近郊が7.2%、地方が6.0%でした。都市部と地方で2.5ポイントの開きがあります。

単身世帯が多く、日中に在宅している人が少ない地域ほど再配達が発生しやすい、という常識的な傾向がそのまま数字に出ています。この偏りは、対策を打つ場所を教えてくれます。全国一律に配送方法を変えるより、再配達率の高い都市部の集合住宅から宅配ボックスと置き配を広げるほうが、投じた費用に対する効果が大きくなります。

無人化の投資判断でも同じ考え方が使えます。平均値だけを見て全店に同じ設備を入れるより、問題が集中している区分を特定して先に手を打つほうが、回収は速く進みます。

政策目標も受取方法の側に置かれている

国土交通省の発表資料によれば、閣議決定された総合物流施策大綱では、数値目標のひとつとして、2030年度までに多様な受取方法の利用率を25.6%から50%程度にすることが位置づけられています(国土交通省 宅配便の多様な受取方法の利用率は約31.0%)。数値目標が受取方法の利用率に置かれている点は、政策の重心がどこにあるかを示すものとして読めます。

無人化を考えるとき、どこを自動化すれば効くのかという問いに対して、この事例は示唆的です。配る側の工程は技術的な難易度が高く、規制の壁もあります。一方で受け取る側の変更は、宅配ボックスの設置と置き配の指定という比較的単純な手段で実現でき、しかも効果が数字に出ます。

自動配送ロボットは制度上どう位置づけられたか

自動配送ロボットは制度上どう位置づけられたか

とはいえ、配る側の無人化が止まっているわけではありません。制度面では、すでに公道走行の枠組みが整っています。

遠隔操作型小型車という区分

改正道路交通法により、一定の基準を満たす自動配送ロボット等は「遠隔操作型小型車」に分類されました。この区分の交通ルールは2023年4月1日から施行されています。基準は、遠隔操作により通行する車であって、最高速度が6キロメートル毎時を超えないこと、車体の大きさが長さ120センチメートル、幅70センチメートルおよび高さ120センチメートルを超えないこと等とされています(内閣府 令和5年交通安全白書)。

時速6キロメートルは、人が早歩きする程度の速度です。この数字が、配送ロボットの用途を規定しています。長距離を任せる乗り物ではなく、拠点から近距離を往復する使い方が前提になります。

歩行者と同じルールで歩道を走る

遠隔操作型小型車は、歩道や路側帯を通行することが原則とされ、歩行者と同様の交通ルールが適用されます。車道を走る乗り物として扱わないという整理です。あわせて、道路において通行させる場合には、車体の見やすい箇所に標識を付けなければならないとされています。

事前の届出が必要

使用者は、遠隔操作により通行させる場合、通行場所を管轄する都道府県公安委員会に一定の事項を事前に届け出る必要があります。届出を出した経路の外を自由に走れるわけではないため、運用は面ではなく線で設計することになります。

この点は事業計画に直結します。配送先が増えるたびに経路の届出を見直す必要があるため、注文の入った場所へ自由に向かう使い方には向きません。決まった区間を反復して往復する用途、たとえばマンションの敷地内や大学構内、決まった商業施設と近隣住宅の間といった閉じた経路のほうが、制度とも噛み合います。

歩行者と同じ空間を走る以上、歩道の状態も運用条件になります。段差、放置自転車、雪。人であれば避けて通る障害が、時速6キロメートルの車両にとっては停止の理由になります。導入検討では、車両の性能表よりも走らせる経路の実地確認のほうが判断材料として重くなります。

届出によらない走らせ方もある

公道を走らせる手続きは、届出の一本道ではありません。経済産業省は、自動配送ロボットの公道走行に必要な行政手続きを、都道府県公安委員会への届出により遠隔操作型小型車を通行させる場合と、届出によらず実証実験等のために公道走行を行う場合に分けて整理しています(経済産業省 自動配送ロボットを活用した新たな配送サービスについて 関連制度)。

後者は、原則として道路交通法に基づく道路使用許可と、道路運送車両法に基づく保安基準緩和認定の手続きが必要になります。遠隔操作型小型車の枠に収まらない大きさや速度の機体、いわゆる中速・中型の自動配送ロボットを使う場合がこれにあたります。

つまり、遠隔操作型小型車の基準は、届出という比較的軽い手続きで走らせるための枠です。この枠を超える機体を使えないわけではなく、その場合は道路使用許可や保安基準緩和認定といった別の手続きに移ります。手続きは重くなるため、まずは枠内の機体で経路と運用を固め、必要になってから拡張するほうが現実的です。

安全基準は業界側でも整備が進む

同じページでは、安全基準およびガイドラインや、安全基準適合審査の概要について、一般社団法人ロボットデリバリー協会の情報が案内されています。制度を所管する省庁の手続きとは別に、業界側で機体の安全性を確かめる枠組みが用意されているという構図です。

導入を検討する事業者から見ると、確認すべき窓口が複数に分かれます。走行の可否は警察、機体の基準は業界団体と国土交通省、事業としての位置づけは経済産業省。無人化の中でも、配送ロボットが特に準備の重い領域である理由がここにあります。

3つの経路をどう使い分けるか

3つの経路をどう使い分けるか

ラストワンマイルの無人化には、性格の違う経路があります。

経路 無人になる工程 制度上の位置づけ 効果が出やすい条件
置き配・宅配ボックス 受け取りの対面 特別な許可は不要 集合住宅、留守がちな世帯
自動配送ロボット 拠点から玄関までの走行 遠隔操作型小型車として届出 拠点が近く、歩道が整備された地域
ドローン 空路の輸送 無人航空機の飛行許可が必要 陸路が遠回りになる山間部・離島

現時点で最も費用対効果が読みやすいのは、いちばん上の行です。設備投資が小さく、制度上の手続きも要らず、効果が調査結果に表れています。一方で自動配送ロボットは、届出のうえで時速6キロメートル以内、歩道中心という制約のなかで運用することになるため、拠点の配置と対象エリアの選定が成否を決めます。

無人化の効き方は「配りきる」より「受け取りを外す」

この事例から読み取れる原則があります。無人化の効果は、いちばん難しい工程を自動化したときに最大化するとは限らないということです。

配送の全工程のうち、玄関先での受け渡しは最も自動化が難しい部分でした。しかし実際に負荷を下げたのは、その受け渡しそのものを不要にする方法でした。対面の受け渡しを外せば、不在という概念が消え、再配達が発生しません。工程を自動化するのではなく、工程をなくすという解き方です。

同じ発想は店舗運営にも当てはまります。レジ作業を自動化するより、そもそもレジに並ばせない設計のほうが効果が大きい場面があります。技術で置き換える前に、その工程が本当に必要かを問い直す順序が効きます。個々の要素技術がどこまで使えるようになったかは無人化技術の進化マップを参照してください。幹線側の自動化の現在地は工場無人化はサプライチェーンをどう変えるのかでも触れています。

まとめ

ラストワンマイルの無人化は、制度と実態で進み方が違います。制度面では、一定の基準を満たす自動配送ロボットが遠隔操作型小型車という区分に整理され、2023年4月1日から歩道や路側帯の通行が原則として認められました。最高速度6キロメートル毎時、長さ120センチメートル以内という基準が、その用途を近距離の往復に限定しています。

一方、実際に再配達率を下げてきたのは受け取り方の変更でした。多様な受取方法の利用率は2026年4月に31.0%となり、再配達率は7.6%まで下がっています。総合物流施策大綱でも、2030年度までに利用率を50%程度にすることが数値目標として掲げられています。配る工程を自動化するより先に、受け取る工程を外す。ラストワンマイルの無人化は、いまこの順序で進んでいます。

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