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クリニック受付DXの教科書!自動精算機から電子カルテ連携まで受付無人化の全システム

クリニックの受付窓口では今、保険証の提示から会計まで、来院者ひとりひとりに人手を割く場面が着実に減っています。この変化の中心にあるのが、受付・会計業務の無人化・省人化、いわゆる受付DXです。マイナ保険証への一本化が進み、予約や問診はスマートフォンで完結し、会計も機械が担うようになりました。背景にあるのは、医療事務の採用難と現場の人手不足という切実な事情です。

この記事では、クリニックの受付から会計までを無人化・省人化する仕組みを、顔認証付きカードリーダーから電子カルテ・レセコン連携まで一気通貫で整理します。開業医や医療法人の事務長が、自院にどこまでのDXを導入すべきかを見極める手がかりになるよう構成しました。

医療事務の採用難・離職を解決する「クリニック受付DX」の必要性

医療事務の採用難・離職を解決する「クリニック受付DX」の必要性

医療事務は資格がなくても働ける職種である一方、患者対応と会計処理を同時にこなす負荷の高さに比べて、待遇面の見劣りが指摘されてきました。医療事務の有効求人倍率は1.61倍(令和6年度・2026年7月時点)と1倍を大きく上回り、採用市場では慢性的な人手不足の状態が続いています(医療事務|job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)))。

医療・福祉分野では2030年に187万人規模の人手不足が生じると、パーソル総合研究所と中央大学の共同推計が見込んでいます(労働市場の未来推計2030(パーソル総合研究所・中央大学、2019年3月))。これだけの規模で担い手が減っていく以上、受付一人に依存した窓口運営を前提にした人員計画は、いずれどのクリニックでも立ち行かなくなります。

こうした状況で、受付・会計という定型業務を機械に任せ、医療事務のスタッフを患者対応や算定確認など人にしかできない仕事へ振り向ける発想が広がっています。受付DXは単なる効率化ではなく、採用難の時代に医療事務という仕事を続けられる形へ再設計する取り組みでもあります。

受付・会計が改善の起点になりやすいのは、この工程が「誰がやっても結果が同じ」定型業務でありながら、患者の待ち時間やスタッフの拘束時間に直結するからです。診療そのものは医師の専門性に依存しますが、資格確認・問診票の回収・会計処理は手順が決まっており、機械に置き換えても医療の質そのものは損なわれません。限られた人員をどこに残すかを考えたとき、真っ先に自動化の検討対象になるのが受付まわりだといえます。受付業務そのものを無人化する仕組みの全体像は、受付の無人化システムとは?でも整理しています。

クリニックの受付から会計までを自動化・無人化する6つの必須システム

クリニックの受付から会計までを自動化・無人化する6つの必須システム

受付から会計までを一気に無人化するには、単発のツール導入ではなく、複数のシステムを連動させる設計が欠かせません。必要になるのは、次の6つのシステムです。

# システム 工程 置き換わる従来業務
顔認証付きカードリーダー(マイナ保険証対応) 受付 保険証の目視確認と記号番号の手入力
WEB予約システム 予約 電話での予約受付と台帳管理
オンライン問診 問診 問診票の配布・回収とカルテへの転記
自動精算機 会計 現金の受け渡しとレジ締めの突き合わせ
キャッシュレス決済 会計 つり銭の管理と現金授受
電子カルテ・レセコン連携 基幹 カルテ内容のレセコンへの再入力

ここでは、この6つを受付・予約問診・会計・基幹連携という4つの工程に分けて解説します。

【受付・顔認証】マイナ保険証に対応した顔認証付きカードリーダーの役割

2024年12月2日以降、従来の健康保険証は新規発行されなくなり、マイナ保険証を基本とする仕組みへ移行しました(厚生労働省)。これに伴い、受付窓口ではマイナンバーカードによるオンライン資格確認への対応が事実上の前提になっています。

オンライン資格確認で使う顔認証付きカードリーダーは、マイナンバーカードのICチップから読み取った顔写真データと、窓口で撮影した本人の顔写真を照合して本人確認を行う機器です。この機器の画面上で、診療・薬剤情報や特定健診等情報の閲覧に対する同意の確認まで完結します(【医療機関・薬局の方々へ】オンライン資格確認の導入で事務コストの削減とより良い医療の提供を ~データヘルスの基盤として~(厚生労働省保険局))。

費用面は導入時期によって扱いが異なります。導入期には病院・大型チェーン薬局に3台まで、診療所・薬局に1台が無償で提供されていました(同資料)。ただし現行機は2026年3月末から順次保守期限を迎えるため、2026年度から第2世代(次期)顔認証付きカードリーダーの販売が順次始まっており、これを導入する医療機関・薬局には2025年度補正予算による費用の一部補助が実施されます(申請受付は2026年6月末開始予定)(マイナ保険証の円滑な利用について(第212回社会保障審議会医療保険部会 資料3・厚生労働省保険局))。これから新規に導入する場合や現行機を入れ替える場合は、補助の対象であっても自己負担が生じ得る点を踏まえて費用計画を立てる必要があります。

受付スタッフが保険証の記号番号を目視で確認・入力する作業がなくなるため、受付そのものを無人窓口に近づけられる点が、顔認証付きカードリーダーを受付DXの起点に据える理由です。

【予約・問診】WEB予約システムとオンライン問診の連動による事前情報取得

WEB予約システムは、電話対応の手間を減らすだけでなく、来院前に来院目的や症状を把握する入口としても機能します。ただし、開業医全体でのWEB予約システム導入率は2021年時点で14.3%にとどまり、年代別に見ても50代開業医で21.9%と、まだ普及の途上にあります(リザエン)。新規開業した医療機関に限ると導入率は62%に達しており、開業と同時に受付システムを整える医療機関が全体平均より多いことがわかります(リザエン)。

WEB予約と組み合わせて効果を発揮するのがオンライン問診です。院内で問診票を配布・回収し、内容を電子カルテへ転記する一連の作業は、来院前にスマートフォンから症状や既往歴を入力してもらう仕組みに置き換えれば不要になります(MEDISMA)。事前入力された内容はテキストデータのままカルテに転記できるため、手書きの問診票にありがちな読み取りにくい記載や記入漏れも防ぎやすくなります(MEDISMA)。

予約と問診を連動させることで、受付スタッフは症状をその場で聞き取る作業から解放され、来院後の案内や確認に集中できるようになります。

【会計・決済】自動精算機・キャッシュレス決済導入によるレジ締め効率化

会計工程の無人化を担うのが自動精算機です。従来は診療終了後のレジ締め作業だけで20〜30分以上かかっていたクリニックが少なくありませんでしたが、自動精算機を導入すれば会計データが自動で記録されるため、売上とレジ内の現金を突き合わせる作業の負担を減らせます(NOMOCa)。複数台の精算機を並べれば同時に会計処理を進められるため、会計待ちの行列そのものを解消できる点も、受付の混雑緩和につながります。

決済手段の面では、キャッシュレス化がまだ発展途上です。2023年8月に実施されたm3.com登録医師への調査では、クレジットカード決済の導入率が20.9%で最も高く、医療機関の56.5%がキャッシュレス決済を未導入と回答しています(m3.comデジカル)。自動精算機の導入とあわせてキャッシュレス決済を整えれば、現金の受け渡しやつり銭管理という属人的な作業自体をなくし、会計にかかる人手を大きく圧縮できます。

【基幹連携】電子カルテ・レセコン連携による業務のシームレス化

受付から会計までの無人化を最後に支えるのが、電子カルテとレセコン(レセプトコンピュータ)の連携です。診療所における電子カルテの普及率は、2023年10月時点で55.0%です(令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査 第161表|e-Stat)。レセコン自体の普及はさらに進んでおり、病院・診療所・調剤薬局でのレセコンの普及率は96.2%に達しています(レセプト請求形態別の請求状況(令和5年度)|社会保険診療報酬支払基金、令和5年4月30日時点)。診療報酬の請求という業務の性質上、レセコンはほぼすべての医療機関に行き渡っており、受付DXを考えるうえでは「すでにある基幹システムにどう接続するか」が論点になります。

電子カルテとレセコンを連携させると、カルテの情報を改めてレセコンに入力する手間が省け、レセプト作成が効率化されます(m3.comデジカル)。記入漏れを自動で点検する機能もあわせて働くため、診療報酬計算の精度が高まり、ミス防止に役立ちます(m3.comデジカル)。診察中の会話からAIがカルテを自動作成する「medimo」のようなサービスも登場しており(medimoとは | medimo)、電子カルテへの入力そのものを省く選択肢になり得ます。

受付での本人確認、予約・問診での情報取得、会計での精算処理は、最終的にこの基幹システムへ集約されることで、クリニック全体の業務がひとつの流れとしてつながります。

システム一元化がもたらすクリニック経営・患者双方のメリット

システム一元化がもたらすクリニック経営・患者双方のメリット

これら6つのシステムは、単体で導入しても効果は限定的です。顔認証付きカードリーダーで取得した資格情報、WEB予約とオンライン問診で得た来院前情報、自動精算機とキャッシュレス決済で処理した会計データが、電子カルテ・レセコンという一つの基幹に集まって初めて、受付DXは効果を発揮します。

クリニック経営の側から見れば、受付・会計にかかっていた人件費と、記入・転記といった付随作業の時間を圧縮できることが大きな利点です。医療事務のスタッフを、患者対応や算定確認、クレーム対応など機械に任せられない業務へ再配置できれば、少ない人数でも窓口の質を落とさずに運営を続けられます。

見落とされがちですが、受付DXにはコスト削減だけでなく診療報酬上の評価という側面もあります。令和8年度の診療報酬改定では、従来の医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算が廃止され、新たに「電子的診療情報連携体制整備加算」が設けられました(厚生労働省 令和8年度診療報酬改定)。初診時は区分に応じて15点・9点・4点、再診時は2点が算定できる仕組みです(同資料)。算定にあたっての施設基準には、マイナ保険証利用率が30%以上であること、電子処方箋を発行する体制を有すること、一定の要件を満たす電子カルテを有することなどが含まれます(同資料)。

ここで重要なのは、加算の要件が本記事で挙げた6つのシステムと重なっている点です。顔認証付きカードリーダーでマイナ保険証の利用率を上げ、電子処方箋と電子カルテを整えることは、受付を無人化するための投資であると同時に、加算を算定するための条件を満たす投資にもなります。受付DXは人件費を削る「守り」の一手にとどまらず、診療報酬という「攻め」の側面も併せ持つと捉えるのが実態に近いといえます。

患者と現場スタッフの側から見た効果は、大きく三つに整理できます。

第一に、待ち時間の短縮です。オンライン問診で来院前に症状を把握できていれば、受付での聞き取りは不要になります。自動精算機を複数台そろえれば会計待ちの行列も分散され、患者が院内に滞在する時間そのものが短くなります。問診票への重複記入がなくなることも、通院のストレスを確実に減らします。

第二に、院内感染リスクの低減です。受付での保険証の手渡し、問診票とペンの受け渡し、会計での現金のやりとりは、いずれも人と人、人と物とが接触する場面です。マイナ保険証によるセルフ資格確認、スマートフォンでのオンライン問診、キャッシュレス決済に置き換えれば、こうした接触の機会そのものを減らせます。待合室での滞在時間が短くなること自体も、感染リスクを下げる方向に働きます。

第三に、スタッフの違算金ストレスの解消です。現金を扱う限り、つり銭の渡し間違いやレジ内の過不足は避けられません。閉院後に金額が合わず、原因を探して伝票をさかのぼる時間は、スタッフにとって小さくない精神的負担です。自動精算機とキャッシュレス決済によって現金の受け渡しをスタッフの手から切り離せば、違算金という問題そのものが発生しなくなります。

経営と患者体験、そして現場スタッフの負担軽減という三方に効く点が、クリニック受付DXが単なるコスト削減にとどまらない理由です。

高齢患者への導入期サポートとスムーズな移行ステップ

高齢患者への導入期サポートとスムーズな移行ステップ

受付DXを進めるうえで大きな懸念は、操作に不慣れな高齢患者を置き去りにしてしまうことです。マイナンバーカードの操作や、WEB予約・オンライン問診のスマートフォン入力に戸惑う患者は少なくありません。導入初期は、顔認証付きカードリーダーの脇に案内担当のスタッフを配置し、操作でつまずいた際にすぐ声をかけられる体制を残す必要があります。

全システムを一度に切り替えるのではなく、まず顔認証付きカードリーダーによるオンライン資格確認を定着させ、次にWEB予約とオンライン問診、最後に自動精算機とキャッシュレス決済という順に段階を踏むと、患者もスタッフも変化に慣れながら移行できます。

スタッフ側の準備も欠かせません。機械が入っても、操作に迷った患者への声かけや、エラーが出たときの切り分けは人が担います。導入前に、想定されるつまずき方と対処の手順を院内で共有しておけば、現場が混乱せずに済みます。受付カウンターや待合に操作手順の掲示を用意し、患者が自分で確認できる状態をつくっておくことも、案内にかかる手間を減らす実務的な工夫です。

従来の窓口対応や紙の問診票による受付も、一定期間は並行して残し、患者が選べる状態を保つことが、クリニックの受付DXを定着させる進め方です。

まとめ

クリニックの受付DXは、顔認証付きカードリーダーによる資格確認、WEB予約とオンライン問診による事前情報取得、自動精算機とキャッシュレス決済による会計処理、そして電子カルテ・レセコン連携という基幹システムへの集約という4つの工程で成り立っています。

医療機関における無人化の考え方は、クリニックの受付を無人化するメリットや注意点は?でも取り上げています。マイナ保険証への移行や医療事務の人手不足という制度・現場双方の変化を背景に、受付から会計までを無人化・省人化する動きは今後も広がっていくと見られます。大切なのは、全システムを一度に導入するのではなく、高齢患者への配慮を残しながら段階的に移行を進めることです。自院の受付のどこから機械に任せられるか、まずは現在の窓口業務を洗い出すところから検討を始めてみてください。

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