A. 完全に無人の店舗を作ったという意味では今回が初めてだったので、かなり勉強しました。
無人店舗って一時期かなり増えましたが、その後かなり潰れていますよね。その中で残っている店舗を見ていると、やはり立地がいい。そこはかなり意識しました。
商圏人口や1時間あたりの通行量など、飲食や小売の大手が見るような指標はかなり細かく見ています。狛江を選んだのも、単に物件が良かったからではなく、強豪がいるエリアで勝てるかを見たかったからです。近くにはカルディさんも含めて6店舗くらいコーヒー店がある激戦区です。
今後は直営をどんどん増やすというより、フランチャイズ展開を考えているので、まず1店舗で「このモデルは勝てる」とオーナーさんに思ってもらう必要がありました。
だからこそ、あえて強豪がひしめく場所に出したんです。
Q. 参入時に特に重視した判断軸は何でしたか?
A. 一番大事にしたのは、お客様にメリットがあるかどうかです。これまで難しかった無人店舗を見ていると、無人なのに高いというケースが多かったんですよね。でも、それでは選ばれにくい。 スーパーが安いのは、さまざまな工程を内製化してコストを削っているからです。うちの場合は、今後さまざまな製造パートナーと連携し、一部の工程では就労支援事業所とも協力していくことを前提に、効率的な製造体制と価格設計を進めています。さらに最終的には、買い付けも自分たちで行って専門商社のような形になりたいと考えています。そうすることで、もっと安く届けられる可能性があります。 この事業は、単に無人店舗を作りたいからではなく、達成したい理由が明確なんです。そういう目標があるからこそ、ここまで積み上げてこられたと思っています。
A. 数字だけ見ると、最初から利益は出ていました。初月からずっと利益は出ていたんです。ただ、最初に想定していたよりは伸び方がゆるやかでした。最終的には投資開始から2年くらいでかなり伸びてきたのですが、初動は思ったよりいかなかったですね。
やっぱり小規模店は、お客様が積み上がっていく形なんです。1回ここで本当に美味しいと感じてもらえれば、その後ずっと来てくれる。そうやって積み上がって今の数字になっているんですけど、最初は「新しくできたんだな」で通り過ぎられることも多いですし、「すぐ潰れるんじゃないかな」と思われたりもするので、認知を取るまでに時間がかかりました。
Q. 集客はどのように行っているのでしょうか。
A. 公式LINEにはかなり力を入れていますし、チラシも打っています。Instagram広告も回しています。やっていること自体は、一般的な店舗の集客施策と大きくは変わりません。
ただ、実感としては圧倒的に立地の力が大きいです。Instagram広告を見ただけで登録することはほぼないと思っていて、実際には一度店を生で見て、「あ、この店か」と認識した上で来店につながっているはずです。そう考えると、やはり立地の影響はかなり大きいですね。
外観もかなり意識しています。看板も強いですし、夜もライトで照らされていて、昼夜どちらも目を引くようにしています。24時間営業という無人店舗ならではの強みがあるので、夜9時、10時以降など、他のお店が営業していない時間にも売れるんです。そこはかなり強いポイントだと思っています。
Q. リピートされるお客様にはどのような特徴がありますか。
A. ほとんどが半径1km圏内の近所の方ですね。その上で、やはりコストパフォーマンスがいいと感じていただけていると思います。
僕らが目指しているのは、スペシャルティコーヒーなのにカルディさんと同等に近い価格で買える状態です。味の質は高いのに値段は近い。その部分に価値を感じていただけているのではないかと思います。
Q. 日々のオペレーションはどのように回しているのでしょうか。
A. 今は新宿のお店で焙煎して、それを届ける形になっています。ただ、新宿の焙煎機が小さいので、もう1晩ほぼ回さないと追いつかないくらいなんです。ありがたいことにかなり売れているので、供給が追いついていない状態ですね。
夜に人が焙煎機を回して、その後商品を届けて、清掃もする。そういう流れなので、ほぼ毎日動いています。運営体制としては、新宿の店舗側と無人店舗側が連携しながら回している形です。完全に切り離して無人だけで動かしているわけではなく、人力と連携しながらやっている感じですね。今のところ、そうしないと回らないです。
Q. 今後さらに売上が伸びた場合、供給体制は大丈夫なのでしょうか?
A. 今後の店舗拡大に対応するため、複数の製造拠点との連携を進めています。その中の一つとして就労継続支援B型事業所などとも連携し、製造工程の一部に障害のある方にも携わっていただく予定です。今後さらに店舗が増えた場合にも安定して商品を供給できるよう、現在は複数の製造パートナーとの連携を進め、供給体制の拡充を行っています。 製造自体は、良い機械が入ればそこまで難易度は高くありません。焙煎も含めて、今はかなり機械が進化していて、ボタン1つで動かせるものもあります。ただ、場所や設備、タイミングの問題はあります。 現在は、既にコーヒー製造を行っている事業者だけでなく、新たな仕事づくりや工賃向上を課題としている就労支援事業所とも連携について話を進めています。
A. やはり、人のマネジメントが楽になることですね。もちろん無人の方が難しい部分もあります。短い時間で何をやってもらうか、遠隔でどこに注意するかなど、設計や管理の難易度は高いです。ただ、それをきちんと整理して仕組みにしてしまえば、その後の運用で管理側にかかるコストは減ります。そこは無人の大きなメリットだと思います。
Q. 防犯面ではいかがでしょうか。
A. 意外かもしれないですが、万引きは年1回くらいしか起きていません。もちろん街の雰囲気もあると思いますが、コーヒーという商品自体が嗜好品で、転売しにくいというのもあると思います。鮮度もありますし、大量に持っていってもそんなに高く売れるものではないですからね。
ただ、それだけではなくて、店として無人感を出しすぎないようにしています。監視カメラはもちろんありますが、それ以上に、お客様との距離が遠くなりすぎないように意識しています。ノートを置いたり、気遣いが伝わるものを用意したり、InstagramやLINEでも人が関わっていることが伝わるようにしています。無人店舗って無機質になりがちなんですけど、そこに人がいる感覚を出すことが、結果として防犯にもつながっていると思います。
Q. 今後の展開について教えてください。
A. 僕は、100億稼ぐことよりも、1000年続くとか、何百年続くことに価値があると思っています。少子高齢化という社会課題と、障害福祉の業界側の課題の両方を解決していくようなモデルは、かなりしっかり作れたと思っています。
これを一過性のものにするつもりはありません。全国に出せるモデルだと思っていますし、文化や世の中を変えていけるような事業にしたいと思っています。
Q. 無人店舗ビジネスの今後については、どのように見ていますか。
A. 意外と大事なのは、業態そのものよりも「誰がやるか」だと思っています。ちゃんとお客様の思考を読み取って、臨機応変に対応しながら、最初の設計からお客様にメリットがある形を作れているかどうか。運営側が楽だからという理由だけで進めるのではなく、あくまで消費者にとってしっかりメリットがある形にして、それを継続的に改善できる会社が入ってくるのであれば、かなり勝ちやすいと思います。
残っている無人店舗を見ても、うちや無人古着屋さんのように、お客様に明確なメリットがあるところは残っています。最初の戦略設計から改善までをきちんとやれる人間や組織がやるのであれば、業態によっては無人化が当たり前になるものも出てくると思います。
最後に、これから無人ビジネスに参入する方へメッセージをお願いします。
A. 結局は、消費者にとってのメリットとデメリットをしっかり考えることがすべての根本だと思います。僕らがどんなビジョンを描いていても、お客様には関係ないんですよね。お客様が生活の中で、何かしら「ここを選ぶ理由」を持てるようにしなければいけない。
そこを設計した上で、現実性、実現可能性、持続可能性まで全部考え切ることが大事です。
店舗を出すだけならリスクが低く見えるかもしれませんが、そこまで全部設計するとなると、お金もかかるし、いろいろなリスクも出てきます。そこまでやり切る気概を持てるのであれば、勝てるんじゃないかなと思います。