完全無人化は可能?トラックドライバー不足の原因や解消方法とは
トラック運送業の人手不足が深刻化していることはご存じでしょうか?
私たちの自宅まで荷物を届けてくれる宅配を含め、現在トラック運送業で働くドライバーが足りていません。
現場からも「トラックの運転手が足りない」といった悲痛の声が挙がっているのが実情です。
人手不足による過重労働は、大きな事故に繋がる可能性もあり、早急な改善が求められます。
そこで注目されているのが、トラック運送業の無人化です。
ドライバーがいなくても、自動運転によってトラックを安全に走らせることができれば、人材不足によるさまざまな課題をクリアできるでしょう。
今回は、トラック運送業の無人化について解説します。
トラック運送業の人手不足が深刻化している理由
新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、フードデリバリーやネット通販の利用者が増加したものの、トラックドライバーが不足しており需要と供給が見合っていません。
配送を担っているトラックドライバーの不足から、1人が担当する業務が多く過重労働なども問題視されています。
トラック運送業の人手不足が深刻化している理由は、以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 厳しい労働環境
- トラックドライバーの高齢化
- 運転免許制度の変更
それぞれ詳しく解説するので参考にしてみてください。
厳しい労働環境
トラックドライバーの労働環境は、決して良いものだとは言えません。
- 年間労働時間が全産業の平均より長い
- 長時間勤務であるものの賃金は年間所得額が全産業の平均より安い
- 長距離ドライバーなどは帰宅できるのは週に1~2回
- 休憩を取りたくてもサービスエリアにトラックが集中しているため停められない
- 高速道路代が出ない
休憩に関しては、厚生労働省の改善基準告示で「ドライバーは4時間以内の運転で、30分以上の休憩を取る」ことが義務付けられています。
しかし、多くのトラックドライバーは同じ時間帯に運転して休憩を取ることになるため、サービスエリアは満車になってしまうことが少なくありません。
現在、このような厳しい労働環境に飛び込む若い人材は少なく、既存のドライバーで仕事を割り振りするしかないのが実情です。
トラックドライバーの高齢化
少子高齢化問題も歯止めが効かない日本国内では、トラックドライバーの高齢化も進んでいます。
運転技術に不安を覚え現役を退く高齢ドライバーも多く、かといって若い人材は入ってこないため、既存のドライバーで穴埋めをしている運送会社も少なくありません。
「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2023」を見ると、トラックドライバー全体の約76%が40歳以上と高齢化が進んでいるのは明らかです。
荷物の積み荷作業などもトラックドライバーが担っていることが多く、長時間の運転を含めた肉体労働が身体への負担になっています。
20代30代といった若いトラックドライバーの人材が早急に求められるでしょう。
運転免許制度の変更
運転免許制度の変更により、運転免許を取得するための要件が厳格化され、トラックドライバーに必要な技術や知識の獲得がより難しくなっています。
これにより、新たなトラックドライバーの育成が難しくなり、既存のドライバーの退職や運送業界への参入が制限される可能性もあるでしょう。
また普通免許を所持していても、取得した年度やAT車限定、MT車であるかなどによっても運転可能なトラックの種類が変わるため、必ずしも希望が通るものではありません。
厳しくなった運転免許制度の変更が、トラックを運転する魅力を減少させ、若者や求職者がトラックドライバーの道に進むことをためらう原因にもなっていると言われています。
トラックの完全無人化実現は可能?
近年、自動運転技術の進化により、トラックの完全無人化が注目されています。
トラックの完全無人化には、人手不足の解消や交通事故の削減などのメリットが期待できますが、信頼性や安全性の問題、法的規制、実証実験などの課題が多いのも事実です。
運送業界では、トラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限される「物流の2024年問題」が課題となっています。
労働時間が短くなることで輸送能力が足りなくなり、消費者の元へ荷物が運べなくなる可能性があります。
そのため、2030年までには自動運転トラックやドローンなどの技術を活用し、物流を完全に無人化する計画が進行中です。
豊田通商などは「後続車無人隊列走行」の実験を行っており、自動運転トラックの単独走行は2026年以降に高速道路限定で実現される見通しとなっています。
ただし、これらの技術はまだ実験段階であり、安全性の確保や社会や消費者からの理解など、さまざまな問題を解決していかなければなりません。
隊列走行によるトラック運送業者の取り組み
トラック運送業界が取り組む新しい試みである「隊列走行」は、安全性と効率性を向上させるための取り組みです。
この技術では、複数のトラックが車間距離を一定に保ちながら自動的に連なり通信システムと安全システムを活用して走行します。
実際に2018年に初めて公道で実証実験が行われており、今もなお実用化に向けて実証実験が続けられています。
トラック運送業界は、ドライバーの労働環境を改善し業務の効率化を図るために、この取り組みを進行中です。
トラックの無人化を進める上での課題
トラックの無人化を進めていく上で、いくつかの課題をクリアする必要があります。
例えば、以下のような課題です。
- 高速道路インフラ整備と関係法の制度整備
- 市民の理解向上と適切な情報発信
- 技術開発と信頼性向上
これらを解決できたときに、私たちの生活に無人トラックによる配送が普及してくるでしょう。
それぞれの課題について詳しく解説します。
高速道路インフラ整備と関係法の制度整備
トラックの無人化を実現するためには、高速道路のインフラ整備が欠かせません。
道路上には、自動運転による無人トラックが適切に通信や位置情報を取得するためのインフラが必要です。
また、現行の道路交通法などは、人間が車を運転することを前提としているため、無人トラックの運行には適用が難しい場合があります。
自動運転車両の保険や運転免許の規定など、法的な枠組みを整備することで、無人トラックの導入が円滑に進むでしょう。
市民の理解向上と適切な情報発信
無人トラックの導入には、一般市民の理解と受容が不可欠となり、適切な情報発信や教育活動が欠かせません。
市民が自動運転技術の安全性や利便性を認識し、受け入れられるように企業も定期的に案内するなど工夫や対策を検討する必要があります。
学校教育や普及啓発活動を通じて、無人トラックのメリットや安全性について正しく解説することで、社会全体が無人トラックの導入に前向きな理解を示してくれることが期待できるでしょう。
技術開発と信頼性向上
無人トラックの実現には、技術開発と信頼性の向上が大切です。
まず、高度な自動運転技術やセンサー技術の発展が求められます。
トラックの自動運転システムは、複雑な交通状況や路面の変化にも確実に対応できる高い精度が要求されます。
さらに、トラックの無人化に伴う安全性の確保と信頼性の向上が重要です。
過去の事故やトラブルから学び、無人トラックの信頼性と安全性を高めるための詳細な実証実験は欠かせません。
リアルな道路状況や予期せぬ状況に対するシステムの応答を試験して向上させなければ多くの信頼を得ることが難しいでしょう。
これらの取り組みによって、無人トラックの導入に対する信頼性が高まり、社会全体が安心して受け入れられる仕組みが築けると認識しておくことが大切です。
まとめ
トラックドライバーの人材不足の問題が深刻化している日本国内において、無人トラックは近い将来私たちの生活に欠かせない存在になるかもしれないことが分かりました。
ただし、トラックの無人化を実現するには、高速道路インフラの整備や道路交通法などの整備が必須です。
他にも、無人トラックの技術開発と信頼性の向上のための、実証実験を重ねて市民からの信頼を築いていくことも重要になってきます。
ひとつの目安である2030年には、これらの課題を克服し無人トラックの実用化が進み、効率的かつ安全な物流システムの実現に向けた一歩が踏み出されることを期待しましょう。
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